蜂蜜ワルツ
そんなことを頭の片隅で思う。
でも、ここで目を逸らしたくなくて。
服部くんと向き合えているような気がして。
ぎゅっと鞄の持ち手を握り締めて、じっと瞳の奥を見つめた。
「……俺は」
「……うん」
「思ってることとか、上手く言えないし」
沈んでいく夕日を背負いながら、ぽつりぽつりと言葉を落としていく服部くん。
その言葉を拾うように、取りこぼさないように、わたしは小さく相槌を打つ。
「石川見てるだけで、……照れる、し」
思いもよらなかった服部くんの気持ち。
発せられるたびに心臓がいちいち反応して、きゅんだのぎゅんだの、大きな音を立てる。
静まれ静まれ、と必死に言い聞かせた。
「……けど、」
「……?」