蜂蜜ワルツ
スローモーションみたいだったのに、ぱっと我に返ったのはすれ違ったあとで。
何か言おうとしているミホちゃんはお構いなしに、咄嗟に口を開いた。
「は、はっとり、くん!」
大きく響いたわたしの声。
こんなに大きな声が出せるなんて、思ってもみなかった。
昼休みの廊下は、当たり前のように人がいっぱいで。
たくさんの視線を感じたけど、知らないことにしておく。
立ち止まった男の子たちの集団。
その最後尾、すらっとした長身がこっちを見る。
絡んだ視線に、顔がまた赤くなるのを感じながら。