蜂蜜ワルツ
わたしも慌てて足を止めたけど、間に合わず背中に激突。
「どうしたの?」
鼻をさすりながら首を傾げれば、何故かミホちゃんはすまし顔で、ゆっくりと歩きはじめた。
何してるの、授業遅れちゃうよ。
そう口を開こうとして、……やめた。
ミホちゃんのその歩みの意味が、分かってしまった。
「でさー、あいつがー……」
「うっわ、まじで?」
すらっとした長身。
ナチュラルカラーの無造作な髪。
ちょっとだけ骨張っている手と、くっきり出ている喉仏。
左目の下にある泣きぼくろ。
正面から迫ってくる男の子の集団。
その中にいても、一目で服部くんを見つけられてしまう。