真夏に溶ける
10年ぶりの再会
8月10日

今日からお盆休みだ

受験のための
学校の夏休み補修もなければ
塾の夏期講習もない

あぁ、久々に休める!!
思いっきり羽を伸ばしてやろうっと!!

高校3年生の吉村 瀬奈(よしむら せな)は
受験生という立場を忘れ
ついそんなことを考えてしまった


ウキウキしながら一階へ降りると
そこには既に祖母がいた

せわしなく買物袋から仕込みの材料を取り出していた祖母が
視線を買物袋から私に移す

「おはよ、瀬奈」

私は「おはよ」と短く返し
早速気になることを聞いた

「どしたのおばあちゃん
今日いつもより早いじゃん
何かあるの?」

祖母はいつもはお昼ちょうどに
やってくるのだが
今日はいつもより2時間早い

祖母は嬉しそうに頬を緩めた

「今日はね久々に颯が帰ってくるんよ
じゃけえ早よ来てご馳走作ったり
泊まる準備したりせにゃと思ってね」

「颯兄ちゃん!?」

驚きのあまり思わず声が上ずる

颯兄ちゃんは
お父さんのお姉さんの子ども
つまり私の従兄弟だ

会うのは
颯兄ちゃんが高校生の時
祖父母の家に下宿して
うちの高校に通っていた時以来になる

期待に胸を膨らませながら
瀬奈はエプロンを慣れた手で身につけ
一家総出で営んでいる
居酒屋の掃除に取り掛かった
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