中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
よ、世にも恐ろしい話だよ……。
私は全身に鳥肌を立たせて、ぎゅっと肩を自分の腕で抱いた。
何が何でもこのことは白木さんにだけはバレてはいけない。もしバレたらその日が私の命日だ。
彼女たちが化粧をして出て行ったのを確認して、私もぐったりした様子で個室を出た。
出勤前だと言うのに、鏡には疲れ切った様子の自分が映っていた。
よろよろしながら化粧室のドアを開け、編集部へと向かおうとすると、後ろから肩を叩かれた。

「おい、お前まだ胃が痛いのか?」
「ぎゃあっ」
「おいおい俺は化けものじゃないぞ……糸目妖怪だとでも思ったのか……」

真塩さんあなたの瞳は糸目じゃなくて切れ長なだけです、全国の地味顔(私含む)に謝ってください!
そんなことを心の中で叫びながら、私はすぐに彼から離れた。

「お、おはおはおはようございます」
「どうした、顔が真っ青だぞ」
「だ、大丈夫ですというかあまりオフィスでは話しかけないで頂けると……」
「お前鍵ちゃんとしまったか? 紫水なんか雑そうだから適当な所に」
「真塩さん私業務に戻ります失礼します!!」
なんてことを大っぴらに話し出すんだあの男は!! どれだけの女性社員が自分に注目しているのか分かっていないのか?
私はかなり冷や汗をかいた状態で自分のデスクについた。
隣の席の白木さんが、『真塩さんと何話してたの?』と聞いてきたが、『シャツの皺を注意されました』と嘘を吐いた。白木さんはぷっと笑っていた。
真塩さんごめんなさい……潔癖症の噂(これは事実だけど)に拍車をかけてしまったかもしれません、私……。
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