中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
パソコンの前に座って、落ち着いた口調でそう伝えると、真塩さんは朦朧としながら、ゆっくり口を開いた。
「……ファイルに、取引先の会社の詳しい動向を書いたものがある。今後タイアップしていきたいと考えている商品のことも、そこに書いてある。それを見ながら、相手の意向に沿ったアピールの仕方をして欲しい」
「分かりました、骨組みだけ口頭で教えてください。アピールしたいことをブラさずに作るよう、努力します」
真塩さんは、口頭で私に指示をして、私はその通りに資料を作成していった。
タイピングの音と、真塩さんの咳き込む音だけが部屋に響く。熱っぽい彼の体温が、布団の中に篭っているのをひしひしと感じた。
一時間ほどで、資料は一応完成した。パソコンをベッドのそばまで持って行き、真塩さんに最終確認をしてもらうと、彼は真剣な表情でそれを読み、うん、と静かに頷く。
「ありがとう、助かった」
その言葉を聞いて、私は一気に力が抜けてその場にへたり込んでしまった。異動してから少ししか経っていないのに、本当に大それたことを言ってしまったと、実はとても後悔していた。
それに、とても怖かった。もし役に立てなかったらどうしようという不安と責任感で、胸が押しつぶされてしまいそうだった。
床にへたり込んでしまった私の頭を、真塩さんは優しく撫でてくれた。それから、もう一度優しくつぶやいた。
「ありがとう、本当に」
その言葉を聞いた途端、安心感で胸がいっぱいになって、何も言葉が出なかった。
「……怖かっただろ、まだ異動して間もないのに、お前よく部署のこと勉強してるよ」
「いえそんな……でも終わってよかったです……本当に」
まずい、手の震えが止まらない。無事終わったから良かったものの、本当に感情任せな行動をしてしまった。