中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
「いつもはどんな所で昼飯食ってるんだ?」
オフィスの近くの有名な洋食店で、ハンバーグを切りながら轟さんが問いかけた。
「いつもは近くのタイ料理店で、フォーを食べたりしてます。外観は怪しげですが、味は美味しいんですよ」
「へぇ、そうなんだ。今度チャレンジしてみようかな」
異動して二ヶ月が経ち、面談がてら轟さんとランチをすることになった。轟さんは、珍しく今日はかっちりしたジャケットを着ていて、いつも以上に凛々しく見える。
仕事は楽しいか、分からないことはないか、人間関係で悩んでいることはないか……色んなことを丁寧に聞いてくれる轟さんの優しさに、私は改めて感謝していた。
人間関係で悩んでいることと言えば、真塩さんのことで頭がいっぱいになってしまう、ということくらいだ。こんな煩悩だらけだと知ったら、きっと轟さんに呆れられてしまうだろう。
「……そういえば、真塩とは上手くやれているか?」
「あ、はい、真塩さん教えるの上手ですし、とてもお世話になっています……」
唐突に真塩さんの話題を出されて、一瞬むせてしまいそうになったが、なんとか堪えた。
轟さんは綺麗にハンバーグを切ってから、形の整った口にそれを運んで行く。私も同じようにハンバーグを切って口に運んだが、彼の話題になった途端、さっきまで美味しかったはずなのに味がしなくなった。