中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました

「……お前、懇親会の時、人一倍もりもり食ってたよな。今でも覚えてるよ」
「えー! あんなに昔のこと、覚えてて下さったんですか! 忘れて欲しい事実ですが……」
「覚えてるよ。あの後俺はすぐこっちの部署に異動したけど、まさかお前も来るとはなー」

自家製のサングリアを飲みながら、轟さんは残念そうに額に手を当てたので、いやいやいや、と穏やかに突っ込んだ。

轟さんは、話しやすくて、優しい。一目見ただけで人間力の高さが伝わってくるし、多くの後輩が彼に憧れている理由も凄く分かる。仕事もすごく丁寧だし、いつも働く仲間のことを考えて仕事を振り分けてくれる。

私みたいなペーペーが、到底気軽に話しかけることのできない存在なのに、こうして仲良くしていただけることは本当に嬉しい。
なぜこんなに気にかけてもらえるかというと、最初の研修で指導に当たってくれたのが若き頃の轟さんだったからだ。
不安でいっぱいだったあの時、轟さんに一番最初に仕事を教えてもらったことは、凄く大きなことだったと、今になって実感している。

「日本酒と合いますね……止まらないです」
「いくら頼んでもいいけど、帰れる程度に抑えろよ?」
呆れたように轟さんが笑って、私のおちょこに日本酒を注いでくれた。

ちょうどよく気持ちがふわふわしてきて、体が少しずつ温まってきた。

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