中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
横谷、という言葉を久々に聞いて、私は一気に顔を強張らせてしまった。なぜなら横谷さんは、正に私のトラウマの元凶である元彼だからだ。
そんなことを轟さんは知るはずもなく、私に資料だけを渡して自分の仕事に戻ってしまった。
どうしてこうも、次々と心を乱す出来事が続いているんだろう。
轟さんのこと、真塩さんのこと、そして元彼のこと……。こんなにも心のエネルギーを必要とする出来事が続くなんて、最近は本当についていない。
頭痛を我慢しながら、私は午後にやってくる彼の顔を思い浮かべて、必死に吐き気に耐えていた。
「エンジニアの横谷です。よろしくお願いします」
来るな来るなと思っていた打ち合わせの時間は、あっという間にやってきてしまった。
「わざわざありがとう。どうだ、こっちのオフィスは」
「綺麗すぎて引きましたよ。ゲームのオフィスなんて男臭くてやってられないですからね」
オープンな客室に、私と轟さんと横谷さんの三人で座り、話し合いは始まった。
客室と言っても完全に仕切られている訳ではなく、休憩所と一体化したとてもオープンな席に私たちは座っている。