中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました

横谷さんは、相変わらず口がうまく、分かり易い伝え方も知っている。
悔しいくらい仕事ができるから、私は彼に仕事のことで説教をされることも多々あった。それがたとえデート中でも、関係なく。

「なるほどね、そうやってはめ込んでいくわけだ。素人だけどすごく分かり易いよ」
「でも実際リリースするとなると、ディレクターの責任がすごく重いですからね。紫水なんかは、よく頑張ってたと思いますよ」
突然に名前を出されて、私はなぜか反射的に彼を睨んでしまいそうになった。

そんな胡散臭いこと、言わなくたっていいのに。
どす黒い感情が胸の中で渦を巻き、どんどん広がっていく。

「へぇー、研修の時は声も小さくて心配してたけど、ディレクターの仕事向いてたんだな」

轟さんは機嫌良く笑顔を浮かべ、横谷さんと深い話まで発展させている。これは、完全に話し合いが伸びるフラグだ……そうげんなりしていると、轟さんが別の資料を取りに行くと言って、席を立った。
「二人になったからって、俺の部下口説くなよー」
な、なんて余計な一言を……。
そして私はとっくの昔に一度口説かれているんですよ轟さん……。
気まずさMAXのまま、私は不本意にも横谷さんと二人きりになってしまった。

< 41 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop