中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました

「……元気してた?」
資料を眺めながら、私と目を合わさずに横谷さんが問いかけた。
「はい、仕事にもだんだん慣れてきましたし……」
「そう、なら良かった。元々順応性高いもんな、奈々は」
「し、下の名前で呼ぶのやめて下さい」
奈々、と呼ばれた瞬間、全身に鳥肌が立った。この、上から目線の口調も、意地悪く下がった目尻も、粘着質な話し方も、何も変わっていない。仕事上では常に爽やかで凛としているのに、二人きりになった瞬間豹変するこの感じ。久々の感覚すぎて、全く耐性がなかった私は、心を上手くコントロールできなくなってしまった。

「なにカリカリしてんだよ」
トラウマの恐怖で心臓がドキドキして、唇が震えてきた。
「お前轟さんとできてんの? この前二人で飲んでるところ見たって噂になってんぜ」
「か、関係ないでしょう」
「轟さんと寝て、少しは上手くなった?」
「なっ……」

――なんで、こんなこと言われなきゃならないの。
怒りと屈辱で全身が震えて、目尻に熱い涙が溜まってきたのを感じた。
……殴りたい。今すぐ殴ってやりたい、この男を。
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