中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました

「……どうして彼女がいるのにこんなことするんですか」
「紫水、その話はもうちゃんと片付いたんだ」
「どうして電話を、掛け直してくれなかったんですか」
「それは、電話じゃなくちゃんと会って話そうと思い直したからで」
「どうしてガールズバーで女の子に触られてたんですか」
「あれは無理矢理連れて行かれただけで、あの後速攻シャワー浴びたし」
「どうして私の為に、あんなに怒ってくれたんですか」

それは、お前にあんな顔をさせている男が許せなかったからだよ。
だって、お前は俺の大切な……。

「……お願いだから、もう振り回さないでくださいっ……」
言葉に詰まっていると、紫水は綺麗な涙を一粒流して、そう懇願した。

「私はもう、恋愛で傷つくのは怖いんです……っ」
紫水は、震えた手で俺の胸をどんと叩く。
「真塩さんが、私のことを本気で好きじゃないのは分かってます。だから、私が勘違いして真塩さんを好きになる前に、離れてください……っ」
――だんだんと小さくなって行く彼女の声を聞いて、俺は胸をぎゅっと強く握られたような感覚に陥った。

俺は、紫水のことをこんなにも苦しませていたのか。

曖昧な立場に置かれる辛さを、やっぱり俺は分かっていなかったんだ。轟さんの言う通りだった。
紫水は、一人で心の中でこんなにも葛藤して、悲しんできたのかと思うと、かける言葉が見つからなかった。

苦しくてどうしようもなくて、思わずまた紫水に触れたくなってしまって、俺は彼女の濡れた頬に手を伸ばしたが、払われた。

「……触らないで、下さい……っ」
潤んだ熱っぽい瞳に睨まれた瞬間、理性が吹っ飛びそうになった。
「もう傷つきたくないんですっ……真塩さんを好きになりたくない、怖いんです……っ」
「……紫水」
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