中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
はっはっは、と声高らかに笑う史子を見て、史子を敵にしたら終わりだな、と感じた。史子が結婚していなかったら、私は一体どれだけ詰められていたのだろう……。
「女性社員からなんか嫌がらせされたらすぐあたしに言いなさいよ、煽ってやるから」
「うんありが……とんでもないな本当に」
「嘘よ、すぐ人事にチクってやるから言いなさいよ」
「史子……」
「やめて、懐かないで」
なんだかんだ言って、史子は優しい。すごく理想は高い史子だったけど、結婚したのはそれこそ丸顔でおっとりした性格の優しい旦那さんだった。
私はそんな二人の姿を見て、すごく幸せな気持ちになったし、結婚っていいものだなって思えたんだ。
だから今、私の中の理想の夫婦は史子の家庭なわけなんだけれど、そのことを彼女に言ったら、逆にディスってんのか? なんて言いかねないので、言えない。
すると、テーブルの上に置いておいたスマホが震えた。着信は、真塩さんだった。
『奈々? 今どこいる?』
「あ、今は史子とタイ料理屋にいるよ」
『なんかさっきゲームの部署の鈴木さんから電話きてさ、ご飯一緒しないかって。ぜひ祝福したいって』
「え、鈴木さんって、プロデューサーの……!?」
『そうなんだよー、史子ちゃんには悪いけど、少し抜け出せないか?』
「う、うんわかった、一応聞いてみる……」
あの~と、言い出しづらそうにことの説明をすると、史子はまたつまらなさそうな表情をした。私の時は鈴木さんに直接祝ってもらえなかったとかなんとか言って。
でも、そんな悪態をつきながらも、史子はしっしと、手を振って(払って)くれた。
「早く行きなさいよ、待ってるわよ旦那さん」
「うん、ありがとう、ごめんね!」
「ご祝儀一番に渡すから、待ってなさいよ」
史子の言葉に、私は最高の笑顔を返して、タイ料理屋を後にした。