中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
「奈々! こっち!」
オフィス街を抜けて、駅方面まで歩くと、私のことを待っている真塩さんがいた。
「ごめんなさい、遅くなって……!」
「いや、こっちこそ急でごめん。鈴木さん本当に強引だからなー」
真塩さんはスマホを手にして、鈴木さんが待っているというお店の地図を開いた。
「……真塩さん今日、新しいスーツなんですね」
「え、一応大切な報告だから、着てみた……変?」
「いえ、かっこいいです」
「お前意外とさらっとそういうこと言うよなー」
呆れたように、でも少し照れ臭そうに、真塩さんがそう呟いた。
真塩さんは意外と照れ屋であると、付き合ってから気づいた。
――潔癖症な彼との同棲には、正直覚悟がいったけれど、案外付き合ってみればそう大変ではなかった。
掃除は彼の趣味なので強要はされないし、放っといても真塩さんが部屋を綺麗にしてくれる。ご飯は私が担当して、洗い物は真塩さん。洗濯物は私が干して、畳むのは真塩さん。案外上手くバランスが取れていると思う。
「ていうか、真塩さんって呼ぶのいい加減やめろよ。お前も真塩さんだろ」
「ゆ、祐貴さん……」
「セックスの時は普通に下の名前で呼ぶのになー」
「やめてください本当に」
本気なトーンで返すと、真塩さんは悪い悪い、と軽く謝った。
それから、ぼそっと自然に、それも唐突に、一言つぶやいた。
「……あー、奈々のウェディングドレス姿、早く見たいな」
「えっ、なんですか急に」
「白、白ね絶対! これ俺の夢なの、白だけは譲れないからよろしく!」
「分かりましたよ……何度も聞きましたからそれ」
そんな会話をしているうちに、駐車場まで辿り着いた。
二人で車に乗り込むと、すぐにレストランの住所を打ち込んで、シートベルトを締めた。