中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
「あのさ、ひとつ提案があるんだけど」
右手を挙げて呟くように提案する真塩さんを見て、気を張っていたはずなのに私は少し笑ってしまった。
「紫水は男に免疫をつける為に、俺は癒しをもらう為に、定期的に二人で会わないか」
「ぶ、げほっ」
私は飲んでいたお水で思い切り咽てしまった。
なんて恐ろしいことを提案するのだ、この男は……。
「む、無理です無理です真塩さんファンに殺されます!」
「いねーからそんな物好き! 外で会うことが怖いなら合鍵渡すし!」
「そっちのが怖いですわ!」
「頼む! 新規プロジェクトが終わるまででいいから。毎晩残業で、このままじゃ癒しを求めて猫を飼ってしまいそうなんだ……」
いや、飼ってくださいよご自由に……。
心の底からそう思ったが、鞄に押し込められた大量の資料と、さっき手に持っていたブラック缶コーヒーを見て、私は何も言い返せなくなってしまった。
よく見たら寝不足のせいで目が赤いし、顔色もそんなに良くない。
社内のエリートがこんなにボロボロの状態で、私なんかに(正確に言うと私の匂いに)癒しを求めてくれている。
ど、どうしよう……断れる気がしない……。
「紫水、今なら仕事で分からないことや相談にいつでも乗ってやろう」
「契約成立でお願いします」
「仕事に熱心でよろしい」
かくして、私と社内ナンバーワンイケメン、真塩さんとの奇妙な関係が始まってしまった。
同時に、私は女性社員全員を敵に回してしまったのだった。
もし史子にこのことがバレたのなら、パクチーを投げつけられるだけでは済まないだろうと、頭の隅で思った。