今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『あの……聞いたことない病名なんですが……その治る病気なんですよね……?』
俺の母親が緊張した声で、震えながらも医師に問いかける。
医師は少し躊躇った顔をして、俺の顔を見つめる。
なんだよ。なんだよ、その間は……
早く治るって言えよ。
それともなんだ、俺は治らない、そう言いたいのか?
『こちらの筋委縮性側索硬化症は現在、具体的な治療法はありません。
リルゾールという薬が進行を遅らせるという効果が証明され、使用されてはいますが………その効果はごく軽微なものです。
基本的には、対症療法を用いています。
これから予想されることとしましては、四肢や体感の麻痺による運動障害、言葉を発音しにくくなるコミュニケーション障害、嚥下障害、呼吸障害の症状があらわれてくるかと思われます。
運動障害で言えば、今後自力で歩くことが困難となり、車椅子生活が考えられます。
コミュニケーション障害で言えば、発音が難しくなるため会話をする』
『………あの!』
俺は淡々と、けれどどこか躊躇う様子の医師の言葉を遮った。
とりあえずさ………運動障害っていうのが一番耳に入ったんだけど。
『俺、バスケ出来ないの?』
だって、運動障害とか言われてさ、これが一番大事なことじゃん……
俺が問いかけると、医師はぐっと言葉を呑みこんだ。
その様子と、口を開くまでの間に、俺は不安が募っていく。