今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
二人、肩を並べて歩く海岸線。
小さい頃は、手を繋いで歩いた道なのだろうかー……
二人には特に盛り上がれるような会話はなかった。
けれど不思議と嫌な空間に感じられなくて、俺は黙って二人の様子を見守る。
『………うわぁ~!!綺麗、綺麗だね、せいちゃん!』
目的の海に着き、学生服のまま砂浜の上を歩く。
白い砂浜、透明な海、潮風が香る、澄んだ空気がそこには感じられた。
『……本当に。』
清二さんがそう答えると、雪ちゃんは少しだけ遠いところに視線を向けた。
『………この海を越えたところで戦争をしているんだよね……。
こんなに綺麗な海、綺麗な空を見れる私は本当に幸せ……。
ねぇ、戦地にいる軍人さんもこんな綺麗な景色がそこにあるのかな……?』
『戦場にもこんな綺麗な景色はあると思うよ。
ただ……僕たちのようにこうしてゆっくりと見ている暇はないかもしれないけど……』
“軍人が見ている景色はどんな景色なんだろうか。
教師が言っていたように、戦局が厳しいのだとすれば僕がこれから見る景色はどんなものなんだろう”
ふと流れてくる心の声を俺はしっかりと聞く。
戦場はただの殺し合いの場、そんなところに綺麗な景色なんて……
そう思ってしまう考えを、俺は振りきる。
『…………せいちゃん、学徒出陣……』
雪ちゃんの言葉に清二さんが振り返る。
その視線の先に映る雪ちゃんの瞳は確かに揺れていた。