今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『雪ちゃん、覚えていますか?
幼い頃、こうして海に来たことがありました。
僕らはまだ子どもで、こうして海に来ては、何度もどっちが潜っていられるか勝負してたね……』
『いつも勝つのは雪ちゃん。
勝つ度に、雪ちゃんは“えっへん”って自慢げな顔をしていたね。
子どもながらにそんな雪ちゃんに悔しさを覚えた、けど、勝負事に意地を張って、負けず嫌いを発揮する雪ちゃんが好きだった………』
『君を守りたい、だから戦場でもどこでも行くと決めた僕を雪ちゃんはなんて言いますか?』
それは、寝ている雪ちゃんには届かない言葉で、届かない想いだった。
『雪ちゃん、僕は……志願兵になります』
清二さんがそう呟くように、小さな声で言うと、雪ちゃんは“せいちゃん”と寝言を発する。
『夢の中にまで僕が出てくるなら、それだけで僕はいい。
ありがとう、ごめんね……僕は必ず志願兵となり、君を戦争のない世界で安心して過ごせる日々のために征きます』
本当に、本当に、雪ちゃんを好きな清二さんー……
今なら“他に好きな奴がいるのか”とか“彼氏はいるのか”とか……そんなことしか心配ない。
でも、彼らは違うー……
“兵隊になる=戦地に赴く=死”
それは、今の俺たちがする恋愛よりも儚くて、一瞬で、切なくて、そして純粋なのかもしれないー……
『だから、雪ちゃん。
僕はこの想いを君の前では言わない。
僕の想いが君を苦しめることのないように、僕はこの想いと一緒に征く。
雪ちゃん、幸せに………したかったよ…………他の誰かじゃなくて………』