今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『……けど、雪ちゃんの幸せに必要なのは、この戦争を終わらせること。
この戦争に日本が勝って、幼い頃のように平和な生活を過ごせるようにする。
一番大事なのはそれだ、だから雪ちゃん、さようなら……』
目頭が熱くなる。
それをまるで冷やすかのように流れる、涙ー……
これは清二さんの記憶、けれど自分自身が流しているんじゃないかというくらいに目頭の熱さも涙の感覚も分かる。
まるで自分に言い聞かすかのように呟く、その言葉は、その想いを果たして雪ちゃんは受け入れてくれるだろうか……
『………せいちゃん………行かないで………』
雪ちゃんが発した言葉に、清二さんも俺もドキッとした。
心臓が飛び出すかのような驚きに、清二さんは寝ているはずの雪ちゃんに視線を向けた。
『……………せいちゃん……置いていかないで………』
目は閉じている、けれど雪ちゃんからの目からは一粒の涙が流れていく。
『……………雪ちゃん……?起きてるの……?』
清二さんが恐る恐る問いかける。
雪ちゃんからの返事はなくて、清二さんはホッとしたのか息を吐く。
『………置いていかないでって………どんな夢を見ているのさ、雪ちゃんは……』
『……………せいちゃん………好き………………』
聞き逃してしまうほどに小さな声で、雪ちゃんがそう呟く。
『…………………………僕も、雪ちゃんのことが好きです…………』
清二さんがそう答えると、雪ちゃんはニッコリと微笑む。
けれど目は閉じていて、すぐに寝息が聞こえる。
夢でも清二さんが出てきて、清二さんに気持ちを伝えて、清二さんからいい返事をもらったのかな………
『…………………往きたくない………往きたくない…ずっと、あなたの傍にいたい………』