今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『雪ちゃん、そろそろ帰りましょう。
今日は鈴ちゃんの誕生日、はやく帰ってお祝いをしましょう』
(どうか、どうか、もう帰ると言って下さい。
あなたがくれた“好き”の言葉を僕が求める前に、その前にどうか帰ると……)
清二さんはその場に立ちあがり、上体を起こした雪ちゃんの手を掴み、引く。
清二さんに手を引かれ、その場に立ちあがる雪ちゃんー……
清二さんはすぐに雪ちゃんから視線を反らし、そして海を見つめる。
“僕はあとどれくらい、この海を雪ちゃんと見ている時間があるんだろうか”
ふと聞こえる、清二さんの心の声に、俺の胸は苦しくなるー……
“あとどのくらいの時間があって、どのくらいの時間が残されているんだろうか”
“だめだ……せっかく雪ちゃんといるのにこんなことを考えていたら……何か話題を切り替えなきゃ!”
ふと視線に入ったのは、先程描きあげることができた、鈴ちゃんの絵ー……
『鈴ちゃんも喜んでくれるといいですね』
視線に入った、その絵を拾い上げ、その絵を覗き込むようにして見つめる。
“鈴ちゃんの誕生日が終わったら、すぐに雪ちゃんの誕生日だ……。
雪ちゃんの誕生日を祝う時間はあるかな。それくらい僕だって出来る、だろうか…”
“その時間がないなら、今、雪ちゃんの誕生日を用意したい…”
『雪ちゃんは、誕生日にどんなものが欲しいですか?』
“残されている時間のうちに、僕に出来るお祝いを、僕がやれるプレゼントを贈りたい……”
『私の欲しいものは、ずっと前から一つだけです』
雪ちゃんは真顔で、そう答えてくる。
雪ちゃんのこの言葉は、この視線は、明らかに清二さんに関係しそうだ……