今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『じゃ、せいちゃん、行こう?』
雪ちゃんはそう言うと、その場に立ちあがり、そして玄関の方へと移動を始めた。
清二さんはその後ろをついていく。
雪ちゃんの家とはすぐ近くらしく、二人が清二さんの家を出てから数分もしないうちに到着してしまう。
その間、やはり二人には会話がないのだが、何故か会話がなくてもそこに居続けることの出来る空間があった。
『ねぇ、せいちゃん……。
今度、私の絵も描いてくれる?』
雪ちゃんは、家の玄関の引き戸に手をかけながら、清二さんに問いかける。
『………絵?』
『…………うん。
せいちゃんの絵、やっぱり上手だったから。
せいちゃんに描いてもらいたいんだ……』
引き戸に手をかけたまま、振りかえることもしない雪ちゃん。
そんな雪ちゃんの言葉に耳を傾けながら清二さんは雪ちゃんの背中を見つめていた。
『……雪ちゃんの望み、というのなら、いつでも』
清二さんがそう答えると、雪ちゃんは顔だけ振り返る。
その目は嬉し泣きなのか、それとも何か別の理由からなのか、一粒の涙が流れていた。
『…………ありがとう、せいちゃん』