今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる








『………ねぇ、清也。

 確かにさ…残酷だよ……清也の病気は。

 けどさ、学校に行きたくても行けなかった人もいれば、上からの命令で“死ね”と言われて死んでいった人達もいる。


 誰かと比べても、確かにあんたの心の中にある悔しさややるせなさは消えない。

 けど、けどね……家族の時間も友達と過ごす時間も、自分から絶ってほしくないのよ……』












『俺だって………信也とさくらがいる毎日を変わらず過ごしていきたいと思うよ……。

 けど、普通に過ごせて、体の自由が効く奴を見てるとさ……なんで俺がその自由を奪われんのか……なんで俺だけなのか……とか…考えちゃうんだよ……』









手も足も思った通りに動かすことが出来て、それがあいつらには当たり前で、日常で。



俺だって、同じ人間、それでも俺にはそれが出来ない、それを失っていくばかり……。







それを同情で見られんのもいやだ。


陰で“可哀想”とか言われんのだっていやだ。






出来ない自分、失っていく自分、それがすごい惨めで……



どうしようもないほどに、最初から捨ててしまいたいと思ってしまうんだ。







そうしたら、失う悲しみをこれ以上増やさずに済むからー……













『………俺、消えてなくなりたいんだよ………』






そうすれば、俺はもう苦しまなくてもいい。


出来ない自分を、失っていくだけの自分を認めなくてもいい。













ーーバシッ





けれど、その考えは一瞬にして無になる。



強烈な痛みが頬を襲う。










『………私が悪いんだよ……。

 私が、あんたをもっと丈夫に産んであげれれば良かったんだ……。


 でもね……でもね……親を目の前にして“消えたい”とか言うんじゃないよ!』








それは、今までに見たことのないくらいの、母親の怒った顔だったー……









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