今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『母さん、一つだけお願いしてもいいかな。
俺、転校したい。転校して新しい所でこの病気と向きあいたい……』
父さんにも仕事がある。
大手の法律事務所で働く、弁護士という仕事がー……
母さんにだって仕事がある。
スーパーのパートだけれど、今年の春に始めたばかりで、最近楽しくなってきたと話していた母さんー……
だから、この話は却下される……そう思った。
けど、母さんはすぐに二つ返事を出す。
『いいよ。母さんの実家に行こうか。
あそこなら伸び伸びしていて気持ちもいいかもしれないし』
『……母さん、仕事は?』
問いかけるなり、母さんは優しく微笑んだ。
『清也の病状が進めばいずれは介護が必要になるでしょ?
だから、今からその練習を始めないと。
あ、でも赤ちゃんの頃からあんたの世話をしてるんだから練習なくてもいいか』
『…………父さんは……?』
俺は知ってるー……
母さんと父さんは、今でも“恋人”って感じがするくらいに仲がいいー……
俺の我儘なんかで、二人の時間を、距離を引き剥がすことなんて出来ないー…
『父さんも清也の病状次第によってはもっと気持ちが楽になれるところで生活をしないかって言ってたから。
それに、地元の法律事務所に声をかけられているみたいだから……まぁ、今より稼ぎは少なくなるだろうけど……。
あんたに満足のいく生活をさせられるかは分からないけど……』
『………俺は………』
俺は、母さんと父さんと再出発が出来るなら、それでいい。
でも、母さんと父さんはー………
『清也、あんた以外の人間はあんたの意見で動くの。
だから、あんたは誰かの心配なんていらないから、自分のしたいように考えな』
母さんはそれだけ言って、部屋を出ていった。