今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
そんな経緯があって、俺は母さんと先に母さんの実家にやってきた。
母さんの実家の玄関までやってくると、扉の横に表札、それから変わった表札を目にする。
『………殉國勇士之家』
だいぶ痛んだ表札。
書かれた文字はところどころ擦れていて、やっとの思いで読む。
殉國勇士之家(じゅんこくゆうしのいえ)って……なんだ?
『これはね、私も疑問に思ってお婆ちゃんに聞いたことがあるんだけどね。
“殉國勇士之家”っていうのは、戦死した兵士の家にかけられた表札なんだって。
戦争に出征する兵士の家には“誉(ほまれ)乃家”とか“出征軍人乃家”と書かれた表札がかけられていたそうよ。
そして戦死が分かると、こんな風に“殉國勇士之家”とか“英霊之家”という表札に変わるんだって。
当時は戦死は名誉なことだったから、この表札がかけられた家の前を通る時は子どもたちでさえもおじぎをするのが決まりだったんだって。
もう見かけなくなった表札だけど、お婆ちゃんはこれがないとお兄さんの清二さんの死を受け入れることが出来なかったんですって……』
『………突然戦争に行って、突然死にましたって言われても受け入れられないよな……』
『お婆ちゃん、お兄さんの遺骨を確認できてないの』