今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる






通された部屋に入るなり、俺は先祖代々の遺影に目がいってしまう。




遺影を見る目的は清二さんを見ること、もちろん見なくても俺とそっくりなことは分かってるんだけど。




けれどやっぱり確認したくなってしまう。






最後から二番目に飾れていた、清二さんの遺影ー……



セーラー服のような黒地の服を着て、被っている帽子には“大日本帝國海軍”とある。



海軍に入隊した時に撮影したものなのだろうかー……










『私のお兄さん、清二だよ。

 アメリカと戦争している時の海軍に入隊してね。

 戦艦大和に乗っていたんだよ、清也君は戦艦大和を知ってるかい?』







戦艦大和ー……



確か、信也の部屋の壁に飾られていた、大きな船の模型ー……




「戦艦大和」って言ってた気がする。





確か……大日本帝國海軍が誇る、不沈艦とも呼ばれた……とか、信也が熱く語っていた気がする。










『大和はね……大日本帝國海軍が建造した史上最大の戦艦。

 “不沈艦”とも呼ばれた戦艦、けれど兄は大和と共に海の底に沈んだけどね……』









『……沈んだ?』








『唯一、本土決戦となった沖縄、そこをどうにか守るためにね……大和は上からの命で沖縄へと向かう途中にアメリカからの攻撃にあってね。

 もうね……アメリカは知ってたの。

 大和への命令はあまりにも突然だったからね、無線でやり取りしているところを聞かれていたの。

 それを知らなかったのは日本人だけ。戦争が終わって、何年も後に知った事実なんだけどね……』








遠い日の記憶を呼びだすかのように、婆ちゃんはどこか遠いところを見つめていた。









『兄は、そんな戦艦に乗っていた。

 そんな戦艦で死んだ、必ず死ぬと分かっていた、それでも兄は自ら志願したの。

 だからといって死にたかった訳じゃないのよ?

 兄は、私たちを、日本人を、犠牲者をこれ以上増やさないように……そして愛する人を守るために散りにいった………』






愛する人……


それは俺の夢の中に出てきた、あの雪ちゃんって子のことだろうか?










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