今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
気がおかしくなりそうだった。
鼻についていた生臭い匂いや焦げた匂いも気にならない程、私は足を動かした。
一刻も早くこの場から離れたかった、一刻も早くこの悲惨な場所から何もない場所へと行きたかった、その思いでただ走った。
背後からは火の熱が襲ってくる、火の粉が舞っては私の服を焦がしていく。
知らない場所、それでも体は勝手に動いた。
あと10メートル走った先に見える大きな扉、ここさえ出られれば外に出られる、私は何故かそう思っていた。
初めて来た場所、けれど私の脳が、心が、ここを開けて外に出ろ、と叫んでいる。
辿り着いた大きな扉に手を置き、その扉を開けようとする。
背後にはもう火が追いついてくる勢い、扉を開こうとするけれど重い扉は開いてはくれない。
『………どうして……やだやだ…!
開いてよ!開いて……!開いてよ…!』
もう背後を確認することが出来ない。
けれど熱で感じる、どこまで火が近づいているのかをー……
『……いや……!死にたくない!』
生きたい、と。
死にたくない、と強く想いを叫んだ時、不思議とその扉が開いた。
その扉を見つめ、右横に感じる人の気配に私は振り向く。
そこには私と同じくらいの歳の男性…いや少年が立っていた。
セーラー服のような黒地の服に、同じ色の帽子を被った少年ー……
帽子には“大日本帝國海軍”と刺繍されている。
『………せいちゃん………』
私の口は、その少年を見つめ、そう呼んでいたー……