今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『あら、小雪、もうお婆ちゃんにあの建物のこと、聞き出してるの?』
お婆ちゃんと私の間に生まれた沈黙を壊すかのように、お母さんがそう声をかけてきた。
私がお母さんの顔を見るために振りかえると、お母さんは少し疲れた顔をしながら、和室に置かれたテーブルの横に座った。
『あの建物?』
お婆ちゃんはお母さんの言葉から、私にそう問いかけてきた。
私はお婆ちゃんの方に再度顔を向け、そして聞いてもいいのか少し迷いながらもその口を開いた。
『……うん。あのね……私、今朝、夢を見たの。
夢の中で、お婆ちゃんの家に来る時に通った道にある大きな工場みたいな建物の中で……』
そこまで言ったところで口が止まる。
迫り狂う炎の中、沢山の切断された体や悲痛な叫び声や呻き声を聞いた、なんて……
そんな悲惨な内容の夢、体調の悪いお婆ちゃんに言うのは………
私が黙ってしまうのを見て、お母さんが代わりに口を開いた。
『ほら、海軍直属の軍需工場があったっていう、あの大きい建物。
あの建物の中で起きた火災から逃げる夢を見たんですって。
それで、なんだっけ……小雪と同じくらいの男の子に助けてもらったんだったっけ?』
お母さんの話にお婆ちゃんの顔が一気に険しいものへと変わっていく。
私はそんなお婆ちゃんの様子を見逃さなかった。