今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
あの建物の傍で
ご飯を食べ終え、30分程ゆっくりした後、私は玄関で靴を履き、お婆ちゃんの家を出た。
車なら近くも感じられる距離なんだろうけど、徒歩でとなるとだいぶ遠い。
蝉の泣き声も、お婆ちゃんの家の方が煩く感じる。
『………あつい………』
お昼ごはんを食べ終えたばかり、現在の時刻は一時半…
つまり一番暑い時間帯に家を出てきた、ということ。
『もう少し遅い時間になってから出れば良かったなー……』
なんて後悔してみるも、戻る気力さえない。
ひとまず目に入ったコンビニに入り、ペットボトルのお茶だけ購入する。
一気に乾いた喉にお茶を流し込むと、お茶の通り道が分かる程に、お茶の通った後が冷たく感じる。
冷たいお茶を飲んだからか再び歩く意欲が湧いてきて、私は歩き始めた。
しばらく変わり映えのしない光景が続き、目の前にあの建物が見えてきた。
『…………やっぱり……夢で見た建物と同じだ……』
私は誘われるままにその建物に近づく。
けれどその建物の敷地内に入ることは出来なかった。
建物は当たり前のように塀で囲まれていて、外からは建物自体の上の方しか見ることはできなかった。
『………立ち入り禁止……か………』
せっかくここまで来たというのに。
一気に体中の力が抜けていくー……
私はその塀の下に無造作に置かれた石の上に腰かける。
『………ここへ来たからと言って夢が本当に雪さんの記憶かどうかは分からないけど………』
建物の周りは少し木々に囲まれていて、薄暗い。
木々が太陽からの熱を守ってくれているのか、何故だか少し冷たい空気がそこにはある感じがした。
『………涼しい……』
目を閉じると、近くの木々にいる鳥たちなのだろうか。
鳥たちの可愛らしい鳴き声だけが耳に入ってくるー……