今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる









『雪ちゃん。

 戦局はいよいよ厳しいものになってきました』




鷲尾清二さんがポツリ、悲しそうな顔で突然そう言い出した。








『………戦局…?』






『アメリカとの戦争、アメリカ側が優勢だそうです』






私の問いかけに、鷲尾清二さんはそう答えた。



アメリカ側が優勢って……それって日本が負けそうだってこと?








『学徒の方がお話されていました。

 けれど僕は、今はアメリカが優勢だと言っても、必ず日本に神風が吹き荒れることを信じています。

 だから、今度こそ、僕はお国の為に逝くと思います』





……突然の鷲尾清二さんからの言葉に私は呆然とする。




いや、どんな顔をすればいいのか、どんな言葉を返せばいいのか、分からないんだと思う。










『雪ちゃん、これを。』




ただ、ただ戸惑うばかりの私に、鷲尾清二さんは折られた紙を差し出す。







そこには“遺書”と書かれていた。








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