今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『それは雪ちゃん、あなたが持っていてください』
そう付け足された言葉に私の胸はズキズキと痛む。
だって、“遺書”って……死ぬ直前の人が書くものだよね……
そんなのをどうして私に渡すの、そして持っていてなんて言うの?
『………あ、…あの………。
私……なんだか今の状況が分からなくて……それで……私が持っているというのは……』
私が本気で困っていることを、少年は知ったのだろう。
だからこそ、優しく私に微笑んでくれたのだ、きっと。
『そうですね。雪ちゃんは倒れて目を覚ましたばかり。
そんな時にこんなものを受け取れないですよね。
けど、時間がないんです。
雪ちゃんを送ったら、僕は港に向かいます』
……時間がない?
港に向かう……?
『明日の朝、港を出発します。
雪ちゃんを今から送って、それから列車に乗らなくては間に合いません』
静かな声で、そう話す鷲尾清二さん……
『………あ……あの………明日の朝……ですか……?』
『すみません。雪ちゃんに帰る時間を知らせてしまうと、せっかく雪ちゃんと過ごす時間がつまらなくなると思って言えませんでした』
つまらなくなるって………
けれど突然、今から帰らなくてはいけないと言われても、逆に突然過ぎて心の準備が………
『こうして雪ちゃんにお会いすることが出来て良かったです』
鷲尾清二さんはそう言うと、すっと立ち上がり、私を見つめた。
『お送りします。
もう歩けますか?それとも抱えましょうか?』
いつもニコニコと微笑んでいる彼の顔が一段と優しく見えた。
なんだろう……鷲尾清二さんが話すこと、その笑顔、それらが全て“これが最後”と言われているように聞こえる。