今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる







『雪ちゃん。雪ちゃんは必ず生きてください。

 僕は幸子や雪ちゃん達を守るために、明日、大和に帰艦します』






この時、きっと雪さんは何も言えなかったのだろう。



私の心の中に雪さんの声は聞こえなかった。






でも、私が当事者だったなら。


私が雪さんの立場だったなら。


きっと私も何も言い返せなかっただろうー……





大好きな人が自分たちを守る為と、死を覚悟している言葉に。

大好きな人が傍に居てくれればそれだけでいいと、それしかない願いさえ、鷲尾さんのこの逞しい笑顔の裏にある想いには届かない、そう思うからー……











『雪ちゃん。雪ちゃんと幼馴染で、僕は幸せでした』




鷲尾さんはそれだけ言い、踵を返して、元来た道を歩き始める。




その背中に、二度とせいちゃんの顔を見ることが出来ない、そう思った。



そしたら勝手に体が動いた。











『………せいちゃん……!』





追いついた、その背中。


伸ばした手が掴んだ、その逞しい腕。


掴まれたことで振り返る、愛しい人。











『………雪ちゃん……?』




驚いた顔で見つめる鷲尾さん。










『…………私は、せいちゃんを幼馴染止まりの想いで見つめてきた訳ではありません…!

 私は……私は………せいちゃんのこと……ずっと……』








この張り裂けそうな想いはなんだろう。



伝えたくて、届けたくて、叫びたいくらいのこの想いは一体何だって言うの……







けれど、鷲尾さんはその先の言葉を理解したのか、人差し指で私の唇を封じた。










『雪ちゃん。

 僕は、決めたんです。

 僕はこの想いがあるからこそ、覚悟を決めれました。

 けれど、その想いで雪ちゃんを縛りたくはない。

 だから、雪ちゃんもその想いを言わないでください』







きっと、雪さんは抑えきれない想いを、好きの想いを鷲尾さんに届けたかったはずなのに。




それは鷲尾さんの指一本で封じられた。

















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