今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる






少年の姿はどこにもなく、私はその建物の中から窓越しに外を見つめる。






先程まで私がいたと思われる工場からは絶えず火で覆われていて、その上をいくつもの小型の飛行機が飛んでいる。









『……………いつになったら……俺たちは自由になれるんだ……。

 逃げて、逃げて……自由さえないのなら……せめて楽にさせてくれ……』








『あなた……自由は自分たちの手で作るものよ……。

 もしあなたが楽になりたいというのなら……私もあなたに着いていきます。

 あなた、あなたが私の自由、そして幸せだから……』







そんな会話が聞こえ、声がした方へと振り向くと、そこには怪我をした人達がたくさんいた。





その中で寄り添う老夫婦の姿………



旦那さんと思われる男の人には右足がなかった。




止血するために白い布で覆われてはいるが、その白い布は血が滲み出ている……



かろうじて血に染まっていない部分が白かったから、元は白い布だと思えたのだ。










『………すまない………生きて、君の最期まで幸せにしてやりたかった……』





『……私は幸せです。あなたと出会い、あなたに恋をし、そしてあなたとの子をもうけることができました。

 きっと武志も…空から私たちを出迎えてくれるはずですよ……』







手を取り、握りしめ合う、その老夫婦の姿に私は胸の鼓動が速くなっていく。





そんな私を余所に、旦那さんと思われる男の人は、近くに転がっていた瓶を取り、その場で振りかざし床に叩きつけた。




ーーバリーン……





その激しい音と共に散らばる瓶の破片を旦那さんは一つ拾い上げ、そしてそれを奥さんと思われる女性の首に当てた。






『………すまない……私もすぐに君を追うよ。

 戦争なんてない、温かな光に包まれた場所で君を幸せにする、そう誓う。

 ………また、会おう………』




その言葉と共に、深く、深く奥さんと思われる女性の首に差し込んだ。


そして深い傷を負わせていくその姿を奥さんと思われる女性は微笑みながら旦那さんと思われる人を見つめていた。




まるで、その姿に恋をしているかのようにー……







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