今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『そうだ!』
雪さんは何かを思い出したようにとう叫び、鷲尾さんを軽く小突いた。
それに気が付いた鷲尾さんもがざごそとテーブルの下に置いていた、丸めた紙を鈴さんに差し出した。
『………私に?』
『今日、鈴ねぇの誕生日でしょ!
だからせいちゃんと一緒にちょっとしたものなんだけど、鈴ねぇに贈り物!』
雪さんの言葉に、ワクワクした顔で鈴さんは丸められた紙を真っ直ぐに伸ばす。
そこに描かれた鈴さんの絵を見て、鈴さんは感極まったのか泣きそうな顔をしていた。
『………ありがとう……雪もせいちゃんも……ありがとう……』
鈴さんは何度もそう二人に“ありがとう”と言っていた。
雪さんとせいちゃんは顔を見合わせ、二人とも微笑んでいた。
どこかでは戦争をしているのに、それでもここは幸せな雰囲気に包まれていた。
誰かを喜ばせたい、そう思う気持ちはこの時代にもしっかりあって、それだけは変わらない。
色々と変わりゆく中で、こうやって変わらないものもあることがなんだか嬉しかった。
『その絵を描いたのは、せいちゃん、なんだよ?
よく描けてるでしょ!』
雪さんがそう言うと、幸子さんがその絵を覗き込んだ。
『本当だー!お兄ちゃん、すっごい上手!
この絵の中の鈴ねぇも生きてるみたい!
すごいそっくりだし!お兄ちゃん、鈴ねぇのこと、しっかり見てるんだね!』
何気なく、そう話す幸子さんの言葉に、私の胸は大きく高鳴った。