今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『幸子、この絵はね。
雪ちゃんと一緒に鈴ちゃんを喜ばせたくて描いたんだよ。
だから鈴ちゃんがいないところで描いていいんだよ。
幸子が言うように、本当に大切な女の子を描く時は、その人とちゃんと描くから』
鷲尾さんは幸子さんを宥めるようにそう言うと、優しく微笑んだ。
『お兄ちゃん、好きな人いるの?』
『私よりも大切な人、いるの?』
幸子さんがいくつか問いかけるも、鷲尾さんは困った顔なんてしないで答える。
『幸子はお兄ちゃんにとって、とても大切な妹だよ。
お兄ちゃんの中で一番大事な女の子は幸子。
けど、幸子もいつかはお兄ちゃんよりもっと大事にしたい人と出逢うよ。
お兄ちゃんも、きっとそういう人と出逢うと思う。
けど、それでいいんだ。お父さんもお母さんもそうだったんだから』
『お父さんとお母さんも?』
『そうだよ。お父さんもお母さんもそうやって家族を新しく作ってきたんだ。
だから幸子もそうなる、お兄ちゃんもね』
鷲尾さんはそう言うと、チラリと私の方に目を向けた。
いや私というよりも、雪さんにー……
『じゃ、お兄ちゃんが一番大事って思える人と出逢えたら、一番最初に幸子に教えて?』
『いいよ。お兄ちゃんが18歳になったら、幸子に教えてあげる』
18歳になったらー………
それって、さっき雪さんと話していた…………
雪さんの欲しいもの、鷲尾さんはちゃんと分かってたんだ………
そう思ったら、どんどん嬉しい気持ちが込み上げてくる。