今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『雪ちゃん。少しだけ外で話しませんか?』
鷲尾さんは雪さんに微笑みながら、そう言った。
雪さんも何か覚悟を決めたのか、鷲尾さんの後を追って、外に出る。
外に出てから、何歩歩いただろうかー……
鷲尾さんと雪さんの間には沈黙しかなくて、変な緊張感が私の心を更に不安にさせる。
ふと鷲尾さんの足が止まった。
鷲尾さんが止まったことに気が付いた雪さんもその場で止まった。
『雪ちゃん。僕は、この街が大好きです。
自然に溢れていて、みんな優しくて。
幸子がいて、鈴ちゃんがいて、雪ちゃんがいる、この街が本当に大好きです。
だから、日本男児と生まれたからには、僕は守りたいんです。
この街も、この街に住む人も、幸子や鈴ちゃんの笑った顔を守るためにも。
そして、雪ちゃんとの約束を果たすためにも……』
鷲尾さんはそう言うと、くるりと体を回転させた。
雪さんは振り返った鷲尾さんの顔を見つめる。
鷲尾さんはそっと雪さんの髪の毛を、その逞しい手で撫でる。
『雪ちゃん。僕は、海軍に志願します。
あの日の丸に雪ちゃんの顔を思い浮かべながら、志願しました』
『………どうして…?
私の顔を思い浮かべるなら……志願なんて………』
『お国のため、そう言ったら日本一、弱虫な僕は志願出来ません。
でも、あの日の丸が雪ちゃんだと思えば、僕は雪ちゃんを守る為なら覚悟が持てるのです。
だから、どうか僕の志願を立派だと褒めてください』