今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる







『相手はお爺ちゃん?』








『違う人。お婆ちゃんの初恋の人』







お婆ちゃんはそう言うと、少しだけ悲しい顔で微笑む。



お婆ちゃんはお爺ちゃんとセットって感じで思っていたけど、お婆ちゃんにも青春時代はあったんだよね。



初恋、そういうのがあったっておかしくない。











『お婆ちゃんの初恋の人って、どんな人?』





聞いてみたくなった。



お婆ちゃんがどんな人と、どんな恋愛をしていたのかー……












『お婆ちゃんの初恋の人はね。

 凛々しくて、清々しくて、そして笑顔のよく似合う人。

 彼は、特攻隊の一人、もう彼の名を知る人も少ないでしょうね……』









『………特攻隊って、飛行機?』






私が知る、“特攻隊”の知識は飛行機で敵艦に体当たりするというもの。



それから鷲尾さんの話で得た、戦艦大和の海上特攻のみ。











『彼はね、もう一つの特攻隊、「回天」に乗った特攻隊員なの』






回天………?




特攻隊ってそんなに色々とあったの……?




私は聞きなれない単語に首を傾げた。











『「回天」というのはね、大日本帝国海軍が開発した人間魚雷、そう特攻兵器なの。

 「天を回らし戦局を逆転させる」という意味で名付けられた回天は、爆弾を詰め込んだものに一人乗りのスペースを設けて、搭乗員が潜望鏡と計器を頼りに敵艦に体当たりするというものでね……。

 一度出撃すれば攻撃の成否にかかわらず搭乗員の命はない、そういうもので特攻した人のことをお婆ちゃんは好きになってしまった、しかもたったの三回しか会っていないのにね……』









『………何それ………攻撃の成否にかかわらず搭乗員の命はないって……』








『まともに敵艦に命中すれば敵艦と共に散りはて、もし何らかの故障が起きても深い海の底に沈むだけ……。


 一度、出撃命令がくだされれば、もう二度と生きて帰ってくることはできない……


 でも、彼は見事に命中させた………』







見事に命中って………




それって、お婆ちゃんの初恋の人は………










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