今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる
『あれは私が軍需工場でお勤めをしている時。
工長に私を含め、五人程の女学生が別室に呼ばれてね……。
「君達にはこれから⑥(マルロク)の仕事をしてもらう」そう言われたの。
⑥はそれまで知られていない秘密兵器で、こうして秘密兵器の仕事をさせてもらえるのというのはなんだか特別な気がしてね、すっかり夢中になって仕事をしていたものよ』
お婆ちゃんは遠い過去を日々を思い出すかのように目を細めながら話し始めた。
私はそんなお婆ちゃんの話をただ、黙って聞くことにした。
『私たちの仕事は九八式魚雷と二式魚雷のかじを調整する仕事、つまり真っ直ぐに進める様にかじを調整するのが仕事だったの』
『九八式魚雷……?二式魚雷……?』
黙って聞こうかと思ったけれど、聞きなれない単語に私は首を傾げながらお婆ちゃんに問いかける。
『九八式魚雷は駆逐艦から撃ち出す魚雷のことで、二式魚雷は飛行機から落とす魚雷だと、その時は説明をされてね。
それ以外は説明される訳ではなかったけれど、当時の戦局は極めて不利な状況で、この秘密兵器こそ大日本帝国を勝利に導く兵器だと聞かされ、そんなものにこうして携われる私はなんて誇りのある仕事をさせてもらえているのだろうと思ったわ……』
『そんな仕事に慣れてきた頃、ある二人の青年がこの工場にやってきたの。
一人は凛々しい顔つきで、もう一人は少し切ない顔をしていて…。
二人は私たちを指導している指導員と話して、その魚雷の外観を優しい表情で撫で回すの。
けれど、その表情の中にはとても闘志溢れるものも感じてね……。
この青年たちは、もしやこれに乗る搭乗員ではないか、そう思った。
そして二人が帰る時、凛々しい顔つきでいらした方が私たちの仕事ぶりを見つめているんです。
私は、その瞬間、その方と目が合ってね……。
瞳の奥が澄んでいて、清々しく、凛々しく、その瞳に吸い込まれる、本当にそう思った。
その瞬間に言い寄れぬ恥ずかしさが一気に私を襲ってきて、私はすぐに視線を逸らした』