今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる






『今まで男性を見てきても恥ずかしさなんて感じたことがない。

 それ故に、余計に感じるこの恥ずかしさが忘れられなかった』










『しばらくしてね、その方がもう一度、この工場に足を運んできたの。

 今度はその方だけ。何故、この間一緒だった方がいないのか、私は気になって、仕事の途中だと言うのにその手を止めて彼を見つめたわ。


 すると、彼は私の元にやってきて、「君たちがこうして僕たちの為に働いてくれること、感謝申し上げます。本当にありがとう。僕は君たちの想いや願いと共に真っ直ぐに進みます」、そう言って彼は私たちに一礼して出ていかれたの』










『そして指導員の方と言葉を交わす彼が“竹内さん”だということを知ってね。

 “出撃日が決まったのか”と問いかける指導員さんに彼はにっこりと笑って“決まりました”と言って工場を出ていったの。



 彼が帰った後で、指導員の方が私たちを魚雷が沢山置かれた部屋に連れて行ってくれてね……。


 「これは人間魚雷“回天”と言うんや。君たちが調整してくれたこの回天に搭乗員が乗り込み、敵艦に突っ込む。これで日本を勝利へと導くんや」そう言う指導員の言葉に、彼の“真っ直ぐ突っ込みます”という言葉を思い出して……意味が分かってしまったの。


 彼がこれに乗り、敵艦に突っ込む特攻兵だと……』









そこまで話した時、お婆ちゃんはあの時の心の痛みを思い出したのか、胸元を掴みながら、その顔を歪ませた。






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