今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる








『私は彼を一目見た時から、恋心を抱いた。

 この手紙を読んで、崩れ落ちながらも何度も彼の名前をお呼びしました。


 忘れろ、とありがましたが、私にとって最初で最後の恋、忘れられる訳がありません。


 私は捨ててほしいともあったこの手紙を、彼が遺した唯一の品物だと思って今まで残してきたの』








お婆ちゃんの目から流れる涙。


皺だらけの皮膚を流れていく涙。



その涙が、本当に綺麗な涙だと思った。






誰かを想って流す涙はこんなにも美しいのだと。


誰かの為に流す涙はこんなにも切ないのだと、私は生まれて初めて知った気がする。








この涙は叶わなくとも、この手紙と共にお婆ちゃんが生きてきたからこそ流せる涙だ。












『………今でも、忘れられないんだね………』






お婆ちゃんの心に深く、深く刻まれた、竹内幸太郎さんー……




でもお爺ちゃんはこのことを知りながら、それでもお婆ちゃんと一緒になった。




そんなお婆ちゃんをお爺ちゃんはどうして愛し続けることが出来たんだろう……。












『でも……どうしてお爺ちゃんと結婚したの?』





聞いてはいけない…



聞いても純愛を思わせるような答えは帰ってこないかもしれない。




でも、もう恋はしないと決めた人が、何故新しい恋を受けれ入れたのかが知りたい。









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