今度こそ、ずっと、あなたの隣にいる








『私、お爺ちゃんが初めて来てくれた日。

 わざわざ私を探し出して、彼の手紙を持ってきてくれたのに。

 でも……「どうして竹内さんはおられないのですか」と問いかけてしまったの。

 あの頃、戦地に赴いていた人にその言葉を投げかけるのは酷なことだったと思うわ…』










『………どうして?』









『心のどこかでは、きっとホッとしているところもあると思うの。

 けれど……戦友と誓ったのは我が身を、己の心さえも国の為に捧げること、けれど沢山の戦友の死を見て、自分だけはその誓いを果たすことが出来なかった、生かされてしまった、そういう無念、自責の念にかられたことでしょう。

 そんな人に、“何故あなたは生きて、彼は死んでしまったのですか”と言われているようなものですからね……』









………生きて、生き残って良かったはずなのに。




それでも尚、戦争は終わって心を楽にはしてくれない。






彼らは、あの頃を懸命に生きていた人は、どれだけの苦しみを味わったのだろう……




私には分からない。




私には分からない。




分からない痛みをどれだけ、体に、心に刻んで生きてきたのだろう……














『お爺ちゃんは私の言葉に、頭を下げた。ずっと深く下げたままでね……。


 心の中では分かってるのよ、朔太郎さんが生きていて良かったのだと。


 あの苦しみから助かった人が多ければ多いほど、それで良かったのだと。


 けれど、どうしても思ってしまうの。


 どうして神様は彼を生かしてはくれなかったのだろうと。

 何故、彼に苦しみ、悲しみ、痛みを背負わせたまま死なせてしまったのだろうと。


 そんなの朔太郎さんからしてみれば責めないで頂きたい、そう思うところでしょうけど。


 あの時の私には、そんな朔太郎さんを受け入れいることが出来なかった……』











< 97 / 150 >

この作品をシェア

pagetop