Airis
「………沙衣、起きな。みんな出て行っちゃうよ」
「ん……」
目を開けると明るくなった劇場。
終わったんだ………
正直話の内容は全然覚えていない。
ヒーローが誰なのかもわからないうちから寝ちゃったから。
「ほら、行くよ」
タケルがわたしのバックを取ってくれたので、手ぶらで立ち上がる。
……立ち上がった瞬間、頭の中がぐわんと揺れた。
「沙衣!?」
タケルが手を伸ばしてくれたけど間に合わずに、わたしの体はイスとイスの狭い通路に打ちつけられた。
「っ……」
「沙衣、めまいがする?」
最初こそ驚いていたタケルも、
ちらりと見るとお医者さんの顔をしていた。