Airis
「これ、頭切れちゃってますね……頭は出血しやすいですけど、血の量ほど傷は深くないんで大丈夫ですよ。跡はしっかり消えますし…」
ギュッと目を瞑る女性にそう声をかけると、小さく頷きが返ってきた。
「あの………」
とりあえず止血、と普段持ち歩いている白のハンカチタオルで傷口を押さえていると、背中側から声が掛かった。
「お医者様か何かですか?」
「あ、僕はそこの総合病院で医者をしているものです…」
確かに勝手に入ってきてから一度も自己紹介をしていなかった。
「じゃあ……」
タオルをめくると、まだ完全にではないが止まりかけていた。
未だに目を瞑ったままの女性を抱えて立ち上がった。
「うちの病院近いんで連れていってもよろしいですか?」
そこにいた責任者らしき人は、
お願いします、と言って扉を開けてくれた。