貴女へ
やはり普通を望むと損をする
デパートに着くなり色々大変なことが起こった。
女性が凄い。確かにこんな軍団に出くわしたら奇声の一つくらいあげてしまうだろう。でもその数が尋常じゃないっ!何なんだよこの人集り。警備員さんまで出てくる始末。…買い物にいくだけでこれなのか?
…といった状態だった。だから一人気付かれないように逃げたんだけど、広過ぎて…人が沢山居て、皆が何処にいるのか全く解らない。取りあえず人が全然居ないフロアのソファに座った。
「ふぅ…」
一つ息を吐き、壁に寄りかかった。
疲れちゃった。きっとこんなんじゃダメだろうけど。でも…色々なことがいっぱい絡み合っていて……まるでコードのように。簡単なようで複雑怪奇に絡まっている…どうしたら伝わるのかな?
「ねぇ。」
突然視界が暗くなった。男の人の声。だけど皆とは全く違う。恐る恐る顔を上げると三人の若い男の人たち。
「お嬢さん、一人なの?…遊ぼうよぉ」
私は一人でぬぼぉっとしていただけ。…こういうの、普通しなくない?
私は即首を振った。すると、どうやらキレたようで…いきなり腕を掴まれた。何この人っ!逆ギレって…男としていけない気がする。器ちっちゃいっ。というか逆ギレ早くない?
…でも今はそんなことを冷静に言う場合じゃない。
「ぁ…ぁぁぁぁあああのっえ、えとその…」
「あぁん?何だぁ、ヤるのかぁ?」
「こいつ、連れ込んじゃおうよぉっ!」
「…ゲーセン、とかぁ?」
ああああああ……何か凄いよぉぉお。
やっぱり力が強くて…私なんか幾ら抵抗してもまるでダメージ無し。寧ろダメージ喰らってるような…
皆は今下で騒がれてるだろうし…ダメだよ…私一人じゃなにも出来ないくせに、一人になるなんて…どう考えてもただのバカじゃんっ!
腕が千切れそうなくらい引っ張られ、ダメかもしれない…
「もう、私…」
小さく言ったときだった。凄い風が起こった気がした。そして腕の痛かった感覚が無くなっている。瞑った目を開くと、見慣れた後ろ姿。
田辺くんだった。
「ふぅ。…きみ、大切な主に何て事したんか、解っとる?」
今まで聞いたこともない田辺くんの声。陽気な声は何処へやら。全くの別人となっている。
そんな冷淡な声で田辺くんは続けた。
「その汚い手ぇで我が主を触りよったよなァ?…同じ事してみ?殺したる。」
こ、怖っ!このブラック田辺くん、あの屋根でいきなりキレた日以来だよっ!いや、今はそれ以上に怖い。
男三人組はもう怯えきってるし…
気付くと田辺くんは三人組に近付いていた。
「っ、やっ、やめっ…!」
私は遅いと思いながらも咄嗟に叫んだ。するとギリギリのところで田辺くんは止まった。
「…我が主の心が広く、大らかで優しいお方やから助かったねェ…命拾いしたなァ。」
そして、私の方に向きを変えた。
「お怪我は御座いませんか、お嬢様。遅れてしまい申し訳御座いませんでした。…でも、私はだから申したのです。こんな野蛮な輩のいるところに行きたがるなど…私の注意を受け入れ無かったのも原因の一つです。今後は、要注意を。」
いっ、いきなり敬語っ?!しかも私そこまで我が儘言って此処に来たんだっけ?ど…どうなってんだよ……あ、そっか。主と主以外の区別ってもの…なのか?何時か結実が言ってたような気も…する。絶対する。うん。あったね、そんなこと。
「…ご、ごめんなさい……でも、助けに来てくれてありがとう。その…怖かった、から…」
いきなり執事モードになった田辺くんに対し、私は謝ったり御礼を言ったり…何か色々と忙しい。
「では、参りましょうか。」
私は頷いた。すると田辺くんは私の手を引っ張り、半ば強引にその場を去った。
人集りが居なくなると田辺くんは溜め息を一つ。
それを見ていると何か申し訳なくなってくる。
「…ごめんなさい。心配かけて」
「アンタは悪ない。悪いんは俺やから。それにアンタが無事やったから平気。ほんま無事で良かった…てか、それ俺の台詞やったな。遅なってもて、怖い思いまでさせてごめんな。」
そう言うと、田辺くんはやさしく笑った。
「まだこんな所おる?…それとも、帰る?」
もうさっきのような怖い声ではなく、優しい声に戻っていた。
「…まだ居たい。だって折角来たのに何も買わないのって勿体ないし。でも…何か皆も大変そうだから…」
「大変やないよ。それに…いざとなったら女になったらええ。魔界人ナメんとき。」
そう言うと、田辺くんは一瞬で女の子になった。魔界人ってますます何なのか疑問が深まる。
それにしても…
「…そこら辺の女の子たちより可愛い。」
普通に可愛い。田辺くんの女の子の姿の方が可愛いなんて…ちょっとだけ、ショックだな……
「大丈夫やて。アンタんが一番可愛いから。…じゃ、まずは日用品売り場、行こっか。」
そう言って差し出してくれた手を私は握り返し、笑って頷いた。すると、田辺くんは私をエスコートした。…女の子の姿で。
日用品を取り扱っているお店の前にくると、見慣れた人数と見慣れていない顔の集団。田辺くんが手を振る辺りからして執事長たちだと解った。
…にしてもさぁ、何か本当に
「皆可愛くなりすぎ。もうそこらの女の子より可愛いよ。もしかして女子力高い?」
「…魔力だから。女子力が高いんじゃなくて魔力が高い。男なのに可愛いって扱いは…」
「っ、ごっ、ごめんなさいっ!そういうつもりは全然無くって、つい…」
私は咄嗟に謝った。すると、皆が一斉に笑って手を差し出してくれた。それにつられ、私も笑って手を取った。
日用品って沢山ある。歯磨きやらコップやらシャンプーやら、少し外れるけど文房具やら、と、本当に色々な物を買った。
「さぁて、次はぁ〜…」
「…下着。まだ買ってない。」
さ、佐藤さーん?下着だなんて…確かに今、皆女の子だけど下着だなんて…
まぁ、どうせタンクトップと学生用の白いブラだけだけど…と思う私が間違っていた。皆解りきったような顔をして、高校生が着るような下着売り場へ行ってるし…。
私は、咄嗟に近くにいた佐藤さんの袖を掴んだ。
「…何?」
「わ、私…普通の白が…」
「…魔王が白?変わってる。」
かっ、変わってるってっ!
「確かにそうかもしれない…かどうかは知らないけどっ!私、白が良いのっ。だって…」
そうしないと、本当にガラッと何もかもが変わってしまった世界についていけない。少しだけでも今までと同じようなものが欲しいと思ってしまう。それに校則は無地、白、だし…
「…良いよ。お嬢様がそう言うなら。」
そう言って、佐藤さんは私と一緒に白の下着があるところまで来てくれた。
「…これ、とかは?」
そう差し出したのは白色。でも周りに小さなお花のレースがあって可愛い。
「うん、良いと思う。けど…が…」
胸、と言えなかった。だけど佐藤さんはしっかり理解してくれてそっとサイズを変えてくれた。佐藤さんって、ほんとうに小さいことによく気を回してくれる人なと思った。
それから、私たちはかごに入れていった。
皆と合流すると、色んなものがあった。折角選んでくれたのに全部買わないのは流石に申し訳なく思えた私は、皆が選んだ中から更に色々と選択した。そしてレジを通して今日の買い物は終了した。
帰り道、荷物は多くなって車の方が良かったかなと思ったけど皆で楽しく帰れたからまぁいっか。
女性が凄い。確かにこんな軍団に出くわしたら奇声の一つくらいあげてしまうだろう。でもその数が尋常じゃないっ!何なんだよこの人集り。警備員さんまで出てくる始末。…買い物にいくだけでこれなのか?
…といった状態だった。だから一人気付かれないように逃げたんだけど、広過ぎて…人が沢山居て、皆が何処にいるのか全く解らない。取りあえず人が全然居ないフロアのソファに座った。
「ふぅ…」
一つ息を吐き、壁に寄りかかった。
疲れちゃった。きっとこんなんじゃダメだろうけど。でも…色々なことがいっぱい絡み合っていて……まるでコードのように。簡単なようで複雑怪奇に絡まっている…どうしたら伝わるのかな?
「ねぇ。」
突然視界が暗くなった。男の人の声。だけど皆とは全く違う。恐る恐る顔を上げると三人の若い男の人たち。
「お嬢さん、一人なの?…遊ぼうよぉ」
私は一人でぬぼぉっとしていただけ。…こういうの、普通しなくない?
私は即首を振った。すると、どうやらキレたようで…いきなり腕を掴まれた。何この人っ!逆ギレって…男としていけない気がする。器ちっちゃいっ。というか逆ギレ早くない?
…でも今はそんなことを冷静に言う場合じゃない。
「ぁ…ぁぁぁぁあああのっえ、えとその…」
「あぁん?何だぁ、ヤるのかぁ?」
「こいつ、連れ込んじゃおうよぉっ!」
「…ゲーセン、とかぁ?」
ああああああ……何か凄いよぉぉお。
やっぱり力が強くて…私なんか幾ら抵抗してもまるでダメージ無し。寧ろダメージ喰らってるような…
皆は今下で騒がれてるだろうし…ダメだよ…私一人じゃなにも出来ないくせに、一人になるなんて…どう考えてもただのバカじゃんっ!
腕が千切れそうなくらい引っ張られ、ダメかもしれない…
「もう、私…」
小さく言ったときだった。凄い風が起こった気がした。そして腕の痛かった感覚が無くなっている。瞑った目を開くと、見慣れた後ろ姿。
田辺くんだった。
「ふぅ。…きみ、大切な主に何て事したんか、解っとる?」
今まで聞いたこともない田辺くんの声。陽気な声は何処へやら。全くの別人となっている。
そんな冷淡な声で田辺くんは続けた。
「その汚い手ぇで我が主を触りよったよなァ?…同じ事してみ?殺したる。」
こ、怖っ!このブラック田辺くん、あの屋根でいきなりキレた日以来だよっ!いや、今はそれ以上に怖い。
男三人組はもう怯えきってるし…
気付くと田辺くんは三人組に近付いていた。
「っ、やっ、やめっ…!」
私は遅いと思いながらも咄嗟に叫んだ。するとギリギリのところで田辺くんは止まった。
「…我が主の心が広く、大らかで優しいお方やから助かったねェ…命拾いしたなァ。」
そして、私の方に向きを変えた。
「お怪我は御座いませんか、お嬢様。遅れてしまい申し訳御座いませんでした。…でも、私はだから申したのです。こんな野蛮な輩のいるところに行きたがるなど…私の注意を受け入れ無かったのも原因の一つです。今後は、要注意を。」
いっ、いきなり敬語っ?!しかも私そこまで我が儘言って此処に来たんだっけ?ど…どうなってんだよ……あ、そっか。主と主以外の区別ってもの…なのか?何時か結実が言ってたような気も…する。絶対する。うん。あったね、そんなこと。
「…ご、ごめんなさい……でも、助けに来てくれてありがとう。その…怖かった、から…」
いきなり執事モードになった田辺くんに対し、私は謝ったり御礼を言ったり…何か色々と忙しい。
「では、参りましょうか。」
私は頷いた。すると田辺くんは私の手を引っ張り、半ば強引にその場を去った。
人集りが居なくなると田辺くんは溜め息を一つ。
それを見ていると何か申し訳なくなってくる。
「…ごめんなさい。心配かけて」
「アンタは悪ない。悪いんは俺やから。それにアンタが無事やったから平気。ほんま無事で良かった…てか、それ俺の台詞やったな。遅なってもて、怖い思いまでさせてごめんな。」
そう言うと、田辺くんはやさしく笑った。
「まだこんな所おる?…それとも、帰る?」
もうさっきのような怖い声ではなく、優しい声に戻っていた。
「…まだ居たい。だって折角来たのに何も買わないのって勿体ないし。でも…何か皆も大変そうだから…」
「大変やないよ。それに…いざとなったら女になったらええ。魔界人ナメんとき。」
そう言うと、田辺くんは一瞬で女の子になった。魔界人ってますます何なのか疑問が深まる。
それにしても…
「…そこら辺の女の子たちより可愛い。」
普通に可愛い。田辺くんの女の子の姿の方が可愛いなんて…ちょっとだけ、ショックだな……
「大丈夫やて。アンタんが一番可愛いから。…じゃ、まずは日用品売り場、行こっか。」
そう言って差し出してくれた手を私は握り返し、笑って頷いた。すると、田辺くんは私をエスコートした。…女の子の姿で。
日用品を取り扱っているお店の前にくると、見慣れた人数と見慣れていない顔の集団。田辺くんが手を振る辺りからして執事長たちだと解った。
…にしてもさぁ、何か本当に
「皆可愛くなりすぎ。もうそこらの女の子より可愛いよ。もしかして女子力高い?」
「…魔力だから。女子力が高いんじゃなくて魔力が高い。男なのに可愛いって扱いは…」
「っ、ごっ、ごめんなさいっ!そういうつもりは全然無くって、つい…」
私は咄嗟に謝った。すると、皆が一斉に笑って手を差し出してくれた。それにつられ、私も笑って手を取った。
日用品って沢山ある。歯磨きやらコップやらシャンプーやら、少し外れるけど文房具やら、と、本当に色々な物を買った。
「さぁて、次はぁ〜…」
「…下着。まだ買ってない。」
さ、佐藤さーん?下着だなんて…確かに今、皆女の子だけど下着だなんて…
まぁ、どうせタンクトップと学生用の白いブラだけだけど…と思う私が間違っていた。皆解りきったような顔をして、高校生が着るような下着売り場へ行ってるし…。
私は、咄嗟に近くにいた佐藤さんの袖を掴んだ。
「…何?」
「わ、私…普通の白が…」
「…魔王が白?変わってる。」
かっ、変わってるってっ!
「確かにそうかもしれない…かどうかは知らないけどっ!私、白が良いのっ。だって…」
そうしないと、本当にガラッと何もかもが変わってしまった世界についていけない。少しだけでも今までと同じようなものが欲しいと思ってしまう。それに校則は無地、白、だし…
「…良いよ。お嬢様がそう言うなら。」
そう言って、佐藤さんは私と一緒に白の下着があるところまで来てくれた。
「…これ、とかは?」
そう差し出したのは白色。でも周りに小さなお花のレースがあって可愛い。
「うん、良いと思う。けど…が…」
胸、と言えなかった。だけど佐藤さんはしっかり理解してくれてそっとサイズを変えてくれた。佐藤さんって、ほんとうに小さいことによく気を回してくれる人なと思った。
それから、私たちはかごに入れていった。
皆と合流すると、色んなものがあった。折角選んでくれたのに全部買わないのは流石に申し訳なく思えた私は、皆が選んだ中から更に色々と選択した。そしてレジを通して今日の買い物は終了した。
帰り道、荷物は多くなって車の方が良かったかなと思ったけど皆で楽しく帰れたからまぁいっか。