婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
「なつ… もう いい加減にしろよ…。」
ベッドの中で背を向けていた私に、圭司が後ろから声をかけた。
「なつ 聞いてる? 俺 ホントに浮気とかしてないから…。」
「圭司はさ… 私の気持ちなんかより、杉本さんを守る事の方が大事なんだよ。」
「え…?」
「そりゃ 若くて何でも素直に聞く杉本さんの方が可愛いもんね。 いいよ 好きなだけ杉本さんのこと甘やかして、面倒見てあげたら? 浮気でも何でもすればいいよ…。 ああ そうだ あの本だけは返してもらうね。さすがに 私も浮気相手に貸すほど、お人好しじゃないから。」
私の言葉に、圭司はため息をついた。
「やきもちもそこまでいくと可愛くねーな」
ポツリと捨て台詞を吐くと、圭司は背を向けてそのまま眠ってしまった。
じわじわと私の目から涙が出てきた。
私だって、こんなふうに言いたかった訳じゃない…。
圭司のこと信じてるから、浮気なんてしないでと圭司の胸に甘えながら言いたかった。
このままじゃ どんどん私は可愛くない女になっていく…。
圭司が浮気するような人じゃないのは分かりきっているのに…。
私以上に圭司から甘やかされて、守られてる杉本さんへの嫉妬心が、私を嫌な女へと変えていくのだ。
『やきもちもそこまでいくと可愛くねーな』
その夜は、圭司の冷たい声が耳に焼きついて眠れなかった。