婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
「あの 杉本さん…。」
私は後ろから声をかけた。
「えっ… なつさん!?」
杉本さんは振り返ると、驚いた顔で私を見た。
「お仕事 お休みできたんですか?」
「えっ… あ そうなの。 中西さんの車に乗っけてもらって…。」
本当は拉致されたようなものだけれど…。
「そうなんですか! なつさん来れないと思っていたので嬉しいです。」
そう言って、杉本さんはにこりと笑った。
あれ…。
なんでこんなに、ニコニコしているのだろう。
仮にも浮気を疑って大人気なく本を返せと言った相手に…そんなに愛想よく笑えるものだろうか?
「あ あの 杉本さん…。」
「はい。」
「ごめんなさい!」
私は、杉本さんに頭を下げた。
「えっ? なつさん… どうしたんですか!?」
戸惑った声で杉本さんが言った。
「パソコンの本 すぐに返せだなんて言ってごめんね…。」
「いえいえ 大丈夫です。急になつさんの後輩に貸すことになったんですよね? その方優先にして下さい。それに 実は瀬崎さんが代わりの本買ってくれたので…。」
そう言って、杉本さんは私ににこりと微笑んだ。
ん…?
なんか 圭司の言ってたことと随分違うような…。
その時だった。
私の向かいから来た3人組の女性達が、すれ違いざまにワザと杉本さんの肩にぶつかってきた。
「ウザいんだよ! このブス…。」
「ブスのくせに瀬崎さんにちょっかい出してんじゃねーよ!」
「早く会社辞めろよ!」
女性達はそれぞれ、杉本さんにそんな言葉を浴びせながら通り過ぎて言った。