婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
『ごめんな 俺のせいで…。なつのことはちゃんと守るから。』
そう言って、圭司が抱きしめてくれたのを今でも思い出す。
だから、さっきの杉本さんが昔の私と重なってしまう。
「杉本さん 会社でも色々されてるんじゃない?」
前に、圭司が言っていた事を思い出した。
「あ はい… 仕事を押し付けられたり、ワザと私ができないような資料、パソコンで作れって言われたり…ですかね。あっ なつさんとお会いした日は何日もかかって入力したデータを誰かに消されて…ました。」
そうだったのか…。
だから、杉本さんはあの日、泣きながら圭司に抱きついたんだ。杉本さんが仕事のことで取り乱したと圭司が言っていたのはこのことだったんだ…。
それなら、圭司が会議室に鍵かけて、こっそり杉本さんの仕事を手伝っていたのも納得できる。
事情を知らなかったとは言え、浮気だと大騒ぎして、本まで奪い取ってしまった自分が情けない。杉本さんには何の罪もないのに…。
「杉本さん 大丈夫? 何か私でも助けてあげられることあるかな?」
「はい ありがとうございます。でも 瀬崎さんがこの件は俺に任せてと言ってくれているので大丈夫です。」
「そう…。」
「あっ 私 そろそろ戻らないと…! なつさんも一緒に行きましょうよ。瀬崎さん喜びますよ!」
そう言って、杉本さんは私の手を握ったまま行こうとしたけれど、私は慌てて杉本さんの手を放した。
「杉本さん 私 あとで合流するね。圭司には私が来たこと、まだ言わなくていいからね。」
私はきょとんとする杉本さんを残して、中西さんのもとへと走った。