婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
「なっちゃん だよね?」
「えっ?」
名前を呼ばれて振り向くと、そこには懐かしい顔があった。
「えっ もしかして春君!?」
驚く私を見てクスクスと笑う彼の名は、西園寺春樹…。
私の初恋の人だ。
3つ年上の春君とは、父親同士が友達だった。
春君のお父様は大きな会社の社長さんで、お城のような豪邸によく私達を招待してくれた。
春君には、ひとつ違いのお姉さんがいて、いつも三人でかくれんぼなどをして遊んでいた。
私が5才くらいの時だろうか。
春君と一緒にクローゼットの中に隠れていたとき、まだ幼い私は彼にこう言った。
『私 大人になったら春君のお嫁さんになりたい。私と結婚してくれる…?』
どこでそんなセリフを覚えたのか、私は春君に逆プロポーズをしてしまった。
その時、春君が何て答えたのかは思い出せないのだけれど…。
そのうち、だんだんと男の子として意識するようになり、小学校の高学年になると、私は恥ずかしさのあまり一緒に遊ぶことが出きなくなってしまった。その頃は、春君の家を訪ねても お姉さんの茜さんとばかり遊んでいた。
お互い思春期になると、たまにある財界のパーティーで顔を合わせる程度になってしまった。
それでも、密かに私は春君への淡い恋心を抱き続けていた。
そんな私の初恋は、春君のアメリカ留学をもって終わりを告げた。それきり、春君とは一度も顔を合わすこともなく、すっかり私の記憶からも消し去られていた。