婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
もう何が何だかわからないくらい頭の中がグチャグチャだ。
今は、何も考えたくない…。
私は助手席のシートを少しだけ倒して、目を閉じた。
ん…?
なんか お尻にチクッとした感じ?
何かある…。
私は腰を浮かせて、お尻の下にあるものを手で掴んだ?
こ これって…。
私の手の中にあったのは、見覚えのない片方のイヤリングだった。
これは、杉本さんのだよね…。
朝 一緒にきたんだから。
イヤリングが落ちてしまう理由なんて、考えなくても分かる。
圭司はきっと、車の中で杉本さんのことを抱きしめたんだ。
そして 酷い嫌がらせを受けている杉本さんにこう言ったに違いない。
『俺のせいでごめんな。柚葉のことは俺がちゃんと守るから…。』
泣きながら頷く杉本さんの口に、きっと圭司はキスをしたんだ。
昔よく 私にそうしたように…。
もう 痛いほどよく分かった。
圭司は杉本さんを愛しているって…。
私は握っていたイヤリングを置いて、車を降りた。
行くあてもなかったけれど、圭司が戻ってくる前にここを離れたかった。
もう 圭司の口から偽りの言葉など聞きたくない…。
私はフラフラとおぼつかない足取りで歩いた。
涙が頬を伝い、次第に視界が滲んでいった。