婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~

「なっちゃん!」

誰かが私の腕を掴んだ。

「春君…。」

顔をあげると、心配そうな表情で私を見つめる春君がいた。

「心配で後をつけてきたんだ。可哀想に…こんなに傷つけられて…。なっちゃん とりあえず、僕の車に乗って。ほら ご主人が戻ってくる前に…。」

「えっ でも…。」

春君はそう言って、私を自分の車へと連れて行った。

「僕が送ってあげるよ。」

運転席に乗り込んで春君はエンジンをかけた。

「春君 私 家の鍵、持ってないの…。お財布も携帯も何も持っていなくて…。」

「じゃあ うちの別荘においで…。この近くにあるんだ。今日は 姉さんも子供連れて来ることになってるし、ちょうど なっちゃんに会いたがってたから…。」

「でも…。」

「落ち着いたら、ご主人に連絡すればいいよ。
さあ 早く乗りなよ なっちゃん。」

「うん。」

私は、車のドアを開けた。
春君の車は白いスポーツカーで、シートは革張りだった。
さすがは、社長の息子なんだなあと、こんな時だというのに、つい感心してしまった。

私がシートベルトをつけると、車はエンジンの音を鳴り響かせて走り出した。
< 37 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop