婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
『実はなっちゃんの事で、瀬崎さんにお話したいことがありまして…少しお時間頂いてもよろしいですか?』
そう言って、彼は俺を近くのホテルのラウンジへと連れ出した。
『それで 何ですか? 話って。』
『ええ 単刀直入に言いますね。 瀬崎さん なっちゃんと別れてもらえませんか? もちろん ただでとは言いません。あなたが言った額、慰謝料として全額お支払いするつもりです。』
『は?』
固まる俺を無視して、彼は一方的に話を続けた。
『実は、僕 彼女に約束したんですよね。僕のお嫁さんにするって。僕はずっとそのつもりでいたんですけど、どうやら 彼女は忘れてしまったみたいで、僕が日本を離れている間に君と結婚してしまったんですよ。でもね 幸い君達には子供もいないし、瀬崎さんさえ別れてくれたら、僕となっちゃんはやり直せるはずなんです。どうか離婚を考えてもらえませんか?』
『…あの 一応聞きますけど、なつと結婚の約束したのっていつの話ですか?』
『彼女が5才の時ですが…。』
『西園寺さん あなたのような人を世間ではストーカーっていうの、ご存知ですか? 度がすぎれば立派な犯罪ですよ。西園寺グループの御曹司ともあろう人が、ストーカーで捕まるなんてマズいでしょ? 今日の事は聞かなかったことにしますから、二度とこんな真似やめて下さい。ああ それから 少しでもなつに近づいたら、通報しますから…。』
俺はそれだけ言うと、彼の前から立ち去った。
それから暫く、彼のことを警戒していたけれど、特に何かをしてくる様子もなかった。